そのほかの主題
歴史・文学・肖像・風景・静物など
聖書と神話のほかにも、西洋の画家と彫刻家は古代の歴史、聖人伝、文学、寓意を描いてきました。近代に近づくにつれて、肖像、風景、静物、日常の情景といった、描く対象の種類そのものが主題になっていきます。
- 年代は制作年(推定は「頃」)、所蔵は主要なもの。連作や複数ヴァージョンがある作品は代表的な所蔵先を記した。
Ⅰ 典拠をもつ主題
文献や伝承に物語の出どころがあり、図像の約束事が共有されている主題。
- 古代ギリシア・ローマの歴史と伝説18点
プルタルコス、リウィウス、ウァレリウス・マクシムスが伝える古代の史実と建国伝説。
- 聖人伝・殉教18点
ヤコブス・デ・ウォラギネ『黄金伝説』を主な典拠とする、聖書に登場しない聖人の生涯・奇跡・殉教・法悦。
- 文学25点
ダンテ、アリオスト、セルバンテス、シェイクスピア、ミルトン、バイロン、ゲーテ、キーツ、テニスン。
- 北欧神話・民族叙事詩・民話10点
十九世紀のナショナル・ロマンティシズムのなかで、ギリシアに代わる「自国の神話」として掘り起こされた主題。
- 寓意・擬人像・諺18点
正義・自由・憂鬱・時間・四季など抽象概念を人物や事物に置き換える。
- 楽園・アルカディア・異郷への憧れ9点
牧歌、田園の奏楽、南洋。
- 歴史画(近世〜近代の事件)20点
同時代または近過去の出来事を大画面で描く。
- 戦争の惨禍11点
戦争がもたらす死と破壊を描き、戦争そのものを告発してきた系譜。
- 死・メメント・モリ11点
死の舞踏、死と乙女、死の勝利。
- 夢・幻想・怪奇20点
悪夢、魔女、理性の眠り、無意識。
- オリエンタリズム11点
ナポレオンのエジプト遠征以降、想像された「東方」——ハーレム、浴場、市場——が十九世紀フランス絵画の主題となる。
Ⅱ 類型そのものが主題
物語の典拠をもたず、描く対象の種類(ジャンル)が主題として成立しているもの。
- 肖像31点
個人を記録し、地位を誇示し、内面を探る。
- 自画像17点
鏡の発達とともに独立した主題となる。
- 風景20点
物語の背景から独立し、十七世紀オランダで自立したジャンルに。
- 都市景観(ヴェドゥータ)と廃墟9点
グランド・ツアーの土産としての都市の眺め、そして時間の堆積としての廃墟。
- 静物・ヴァニタス14点
アカデミーの序列では最下位、しかし物の実在と時間の経過を扱う哲学的ジャンル。
- 花と庭9点
十七世紀フランドルの花束から、植物図譜、印象派の庭へ。
- 風俗(日常)25点
農民、市民、居酒屋、家庭。
- 裸婦・水浴18点
ヴィーナスの口実を捨て、現実の身体として描かれた裸体。
- 恋愛・接吻・雅宴17点
求愛、恋文、雅宴画(フェート・ギャラント)から世紀末の「接吻」まで。
- 音楽・舞踊14点
合奏の場面から、音楽そのものを絵画で翻訳する試みまで。
- 遊戯・スポーツ・見世物11点
子どもの遊び、カード、競馬、ボート、拳闘、サーカス、コメディア・デラルテ。
- 労働と社会15点
農民、石割り、工場、貧困。
- 学問・科学・医学9点
解剖学講義、実験、天文学者、医師。
- 近代都市・機械15点
駅、大通り、鉄塔、群衆。
- 海と船14点
難破、嵐、氷海。
- 動物16点
博物学的観察から、馬の肖像、狩猟画、そして動物の精神性を描く表現主義まで。
- 子ども・家族・母性14点
聖母子の型を離れた世俗の親子。
- 室内と窓14点
閉じた部屋と光の入口。
- 夜と人工の光8点
蝋燭、月光、ガス灯、花火、カフェの電灯。