とびらミュージアム西洋美術史を主題から引く

Novum Testamentum in arte occidentali

新約聖書

カタコンベの壁画から20世紀まで、西洋美術は新約聖書の場面を繰り返し描いてきました。描かれた場面は、受胎告知と降誕に始まり、キリストの公生活と受難、復活、聖母の生涯、使徒たちの伝道、ヨハネの黙示録と最後の審判にまで及びます。

凡例
  • 制作年・所蔵は一般的な通説によります。厳密な典拠が必要な場合は各リンク先で確認してください。
  • 章節番号は新共同訳・聖書協会共同訳に従っています。聖母の生涯やマグダラのマリアなど、福音書に記述のない主題は外典(ヤコブ原福音書)や『黄金伝説』に基づきます。

第一部 受胎告知とキリストの幼年期Infantia Christi

受胎告知から博士との議論まで。マリアと幼子を中心とする幼年期の物語は、聖母崇敬と結びついて西洋美術で最も多く描かれた主題群であり、降誕・三博士の礼拝は祝祭的な大画面に、エジプトへの逃避は風景画に展開しました。

第二部 洗礼者ヨハネとキリストの公生活Vita publica

洗礼、荒野の誘惑、弟子の召命、奇跡、出会い、譬え話。カラヴァッジョの《聖マタイの召命》やヴェロネーゼの《カナの婚礼》のように、福音の物語は同時代の風俗の中に置き直されて描かれました。

第三部 受難Passio

エルサレム入城から埋葬まで。受難は典礼と黙想(『十字架の道行』、受難劇)の中心にあり、磔刑・ピエタ・十字架降下は西洋美術で最も反復された図像です。

第四部 復活、昇天、聖霊降臨Resurrectio

墓から立ち上がるキリスト、「我に触れるな」、エマオの晩餐、疑うトマス、昇天、聖霊降臨。復活の主題は「見ること」と「信じること」の関係を問い、カラヴァッジョとレンブラントが最も深く掘り下げました。

第五部 聖母マリアの生涯と栄光Vita et gloria Mariae

福音書には記述のない、外典と伝承に基づく聖母の生涯——誕生、神殿奉献、婚約、死、被昇天、戴冠、無原罪の御宿り。マリア崇敬の展開とともに膨大な図像が生まれました。

第六部 使徒行伝と使徒たちActa Apostolorum

ペテロとパウロを中心とする教会の始まり。ローマ教皇権の根拠となる「鍵の授与」、パウロの回心と殉教、ステパノの石打ち。ラファエロのタペストリー原画とカラヴァッジョのチェラージ礼拝堂が頂点です。

第七部 ヨハネの黙示録と最後の審判Apocalypsis

黙示録の四騎士、子羊の礼拝、天使と竜の戦い、黙示録の女、そして最後の審判。デューラーの木版画連作と、ミケランジェロのシスティーナ壁画が二つの頂点。

第八部 初期キリスト教・中世の新約図像Ars paleochristiana et medievalis

カタコンベの善き羊飼いから、ラヴェンナのモザイク、写本、ロマネスク・ゴシックの彫刻とステンドグラスへ。近世の画家が受け継いだ図像の型はここで形成されました。

第九部 近現代の新約:福音の再解釈Aetas nova

教会の注文が減った19世紀以降も、キリスト像は画家の自画像、社会批判、民族の受難、実存の問いとして描き続けられました。ティソは水彩350点のキリストの生涯を、ルオーは版画58点の《ミゼレーレ》を残しています。